エマージング・アーティスト賞

掲載内容は2019年時点のものです

経歴

野村アートアワード初代のエマージング・アーティスト賞に選ばれた新進気鋭アーティスト。

自由な連想(アソシエーション)、意味の断片化(フラグメンテーション)や物語の流用(アプロプリエーション)といった手法を用いて、映画、詩歌、演劇、小説、インスタレーションの各分野の表現方法を、緩やかながらも大胆に統合するアーティスト。高度に様式化されたチェンのセノグラフィーには、様々な文化、社会的立場、実存的な問いが共存する。その制作実践を通じて、物体化された美的なフォルムでは具象化し難い、複雑で繊細な精神的状態に言及する表現を探求している。彼の作品は、現代中国の活況や急進的な社会変化を指摘するに留まらないばかりか、いわゆるアイデンティティーへの問いには拘泥せず、多文化主義(マルチカルチュアリズム)の観点から新たな価値観を見出そうとしている。一見すると、作品にはチェン自身の価値判断は表現されていないように思える。しかしそのことこそが、表現者としての彼の自立性を体現しているとともに、境界や差異、さらに様々な側面からの軋轢、周縁化(マージナリゼーション)という作品の主題に自らの思想を投影させていると言える。

マルチチャンネル映像によるインスタレーション作品「狂人日記(Diary of a Madman)」(2016–17)は、K11アート財団(香港)の支援で参加したニュー・ミュージアム(ニューヨーク)でのレジデンシープログラム中に制作した作品。2017年にチェンにとってアメリカでは初となる美術館個展を同美術館で開催し、本作品を発表した。ニューヨーク市街の映像、といえば思い浮かぶような見慣れたイメージと、周縁的な視点から捉えた予想外のイメージとを組み合わせたこのインスタレーション作品は、中国文学における最初の近代短編小説として知られる、魯迅が1918年に発表した作品からそのタイトルを借用している。

チェンのもう一つの代表作「In the Course of the Miraculous(奇跡が起こる過程で)」(2015)は、2013年に参加したオランダ国立芸術アカデミー(アムステルダム)でのレジデンシープログラムで制作を開始した、9時間に及ぶ映像作品。1924年から2011年という年月にわたって、事実と虚構を織り交ぜながら、冒険と探求をテーマにした3つの実在の話を物語る作品である。

これまでに数多くのビエンナーレや展覧会に出展しており、主なものに、フロント・インターナショナル:クリーブランド現代美術トリエンナーレ(クリーブランド、2018)、シカゴ美術館(シカゴ、2017)、第63回オーバーハウゼン国際短編映画祭(オーバーハウゼン、2017)、インディアナ大学ブルーミントン校メディア・スクールでの「China Remixed Initiative(チャイナ・リミックス・イニシアチブ)」展(ブルーミントン、2017)、第14回イスタンブール・ビエンナーレ「Saltwater: A Theory of Thought Forms(ソルトウォーター:思念形体の理論)」(イスタンブール、2015)、ゴッホ美術館での「When I Give, I Give Myself」展(アムステルダム、2015)、パレ・ド・トーキョーでの「Inside China―L’Intérieur du Géant(中国内部:巨人の内側)」展(パリ、2014)、第8回深圳彫刻ビエンナーレ(深圳、2014)、ユーレンス現代美術センターでの「ON/OFF: China’s Young Artists in Concept and Practice(ON/OFF:コンセプトと実践から見る中国若手アーティスト)」(北京、2013)、第26回ヨーロッパ・メディアアート・フェスティバル(オズナブリュック、2013)、ソフィア王妃芸術センターでの「Video Art in China―MADATAC(中国のビデオアート)」展(マドリッド、2011)、第3回広州トリエンナーレ(広州、2008)、中国美術学院での第2回中国ニューメディアアートフェスティバル(杭州、2004)が挙げられる。

2014年に第1回OCATアンド・ピエール・フーバー美術賞、2013年にアブソルート・アート・アワードにノミネート。2011年にはオンライン・アート・マガジン、ラディアン誌のベスト・ビデオ・アーティストに選出された。また、創作活動の傍ら、2017年には若手アーティストのための実験的な活動の場として、アーティスト・ラン・スペース「マーティン・ゴヤ・ビジネス」を中国・杭州に設立。

1981年内蒙古生まれ。中国・杭州在住。

経歴

キャメロン・ローランドは野村アートアワード初代のエマージング・アーティスト賞に選ばれた新進気鋭アーティスト。ローランドの作品は、現代生活を規定する法的および経済的構造への批判を主題としている。フィラデルフィアで生まれ、現在はニューヨークのクイーンズ区を拠点に活動。

これまでに、ロサンゼルス現代美術館(ロサンゼルス)、エタブリスメント・デ・オ・ファス(Établissement d’en Face、ブリュッセル)、ガレリー・ブーフホルツ(Galerie Buchholz、ケルン)、フリ・アート・クンストハーレ(FriArt Kunsthalle、フリブール)、アーティスツ・スペース(ニューヨーク)、エセックス・ストリート(ニューヨーク)で個展を開催。

また、グループ展においては、セセッション館(ウィーン)、ハーバード大学美術館(ケンブリッジ)、ホイットニー美術館(ニューヨーク)やニューヨーク近代美術館(ニューヨーク)、そしてサンパウロ・ビエンナーレ(サンパウロ) などに参加。

2020 年には、ロンドンのインスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アーツで個展が開催される。

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